その日、私はいつものようにリビングでくつろいでいました。窓から差し込む西日が壁を照らした瞬間、それまで気づかなかった一本の細い線が壁を斜めに走っているのが目に入ったのです。心臓がどきりと音を立てました。これが、あのテレビで見た建物の欠陥というやつだろうか。我が家は築八年の分譲マンションで、これまで特に大きな問題もなく快適に暮らしてきただけに、その衝撃は大きいものでした。私はすぐに立ち上がり、壁に近づいてみました。それは髪の毛ほどの本当に細い線で、長さは三十センチほど。指で触れても段差は感じられません。しかし、一度認識してしまうと、その存在感がどんどん大きくなっていくように感じられました。不安に駆られた私は、すぐにスマートフォンのカメラで何枚も写真を撮りました。そして、分譲時の書類を引っ張り出し、管理会社の連絡先を調べて電話をかけました。事情を説明すると、電話口の担当者はとても落ち着いた声で、まずは慌てないでくださいと言ってくれました。ひび割れは珍しいことではない、特に壁紙に生じるものはほとんどが心配いらないケースだと。それでも私の不安は拭えず、一度見に来てほしいとお願いしました。数日後、管理会社の担当者と施工会社の方が一緒に部屋を訪れました。彼らはひび割れをじっくりと観察し、計測器のようなもので幅を測り、壁を軽く叩いて音を確認していました。緊張して結果を待つ私に、担当者はにこやかにこう言いました。これはヘアークラックと呼ばれるもので、壁紙の下地である石膏ボードの継ぎ目に出たものです。建物の構造には全く影響ありませんよ、と。その言葉を聞いて、心底ほっとしたのを今でも覚えています。原因は、季節の変わり目の気温差による建材のわずかな伸縮だろうとのことでした。結局、補修は壁紙の張り替え時に行えば十分だという話になり、その日は調査だけで終わりました。壁の亀裂を発見した時はどうなることかと思いましたが、専門家にきちんと見てもらうことで、大きな安心感を得ることができました。何事も、まずは専門家に相談することが大切だと実感した出来事でした。
我が家の壁に謎の亀裂を発見した日のこと